その笑顔が、その声が、今日いなくなるとは思えない落ち着きで、逆に俺が声を荒らげようとする。
すっと息を吸ったけれど、吐いた息が言葉になることは無かった。
“それと、心のゆとりの無い秋頼にもうひとつ。弥衣が「なにか声に出す前に、三秒考えるの。その三秒で、自分も人も変えられるんだよ」だって”
“あー...って、さっきからその心のゆとりが無いってなに?彼女になに話してんだよ”
“はは、だって秋頼すぐ怒るし、口悪いし”
彼女はここにいないくせに言葉で俺を救ってくれる。
じゃあ、これから君が下に下に落ちた時、誰が救ってくれるんだ。引き上げてくれる手はどこにある。
「...わかった。とりあえずベッドに戻って」
「うん、そうだね」
俺が取り乱してどうする?
優羽が言いたいのは、これじゃない。まだ、終わりじゃない。
ベッドに戻ろうとする優羽を支えようと窓側に行くと、一人の女の子が帰っていくのが見えた。
外を見ていたんじゃなくて、帰っていく桜名さんを見ていたんだろう。
今日が最後だってことは...桜名さんは?



