今日俺たちと会っているのは、彼女と会えないから?彼女には話せないことだから?
考え始めると食欲なんて無くて、ブラックコーヒーを注文。
芹沢さんは優羽と同じものを頼んでいた。謎の対抗心を感じる。
少しの無言のあと「二人を呼んだのは...」と切り出した。
コトン。
注文したものがくる前にテーブルに置かれたのは、ノート。お冷の水滴で端がふやけていく。
「この色、夢宵桜って呼ぶらしい」
綺麗な名前、と思うのにどうも優羽の顔がそれと釣り合わない。
これから告げられる優羽の言葉に耳を塞いでしまいそうで、見えないようにテーブルの下で両手を握る。
「───僕の持ってる時間、あと一ヶ月なんだ」
わからない。
今俺はどんな顔でいる?視界が揺れているのは俺の体が震えているから?
返事なんてできるはずがなかった。
だからといって泣くことも無い。もう、何も分からない。口も頭も、動かす気力が残っていないのは確かだった。
「このノートは?」
情けないことに、先に口を開いたのは芹沢さんで。
浅い関係だからこその言葉ではないことはわかる。口調は荒いけれど、きっと俺と同じで優羽を大事に思っている。



