でも、もう揺らがない



ありがとう、優羽。



「マ、マイクでもう一度.....え!?花婿!?」



司会者の驚く声と、何も言わない彼を不思議に思って目線をあげるとすぐに涙で視界がぼやけた。雫が落ちて、また涙を作る。



「...っ」


「ごめんね、ごめんね由良くん...」



由良くんが、涙を流しているから。



泣きじゃくるようなものではなくて、無意識に頬に落としてしまったような涙で。



初めての表情に焦ってしまって、真っ白なグローブをつけた手を由良くんの頬へ触れにいく。



「...あー、すみません。最後のは内緒ってことで。2-1はこれで以上です」



無理やり締めた由良くんは、拍手が響く前に私の手を引いてステージ裏に向かった。



着替えるのかと思えば、由良くんの冷たい手は離されずに旧校舎へ入っていく。



この世界には私たちしかいないのかと思うくらいに周りの音が聞こえない。



不規則なリズムを奏でるような階段を上る音。衣装が擦れる音。妙に耳に馴染んで、落ち着いて、それなのに息が苦しい。



多分私はこれから、全てを知ることになる。



怖くないよ、由良くん。



私に向いたありったけの愛を知るだけなんだから。