「あ!体調不良で棄権した最上くんですね、平気そうでなによりです!質問をどうぞ!」
「───二人はお互いに、なにか伝えたいこととかありますか?」
ようやくわかった、夏音くんが棄権した理由。この質問をするためにわざと代役を立てたのか、と納得した反面焦りでマイクを落としそうになる。
まだ伝えたいことが纏まっていない。あれもこれもってスマホのメモが増えていくだけだった。
出場者全員に投げかけられる質問。何かを期待するような視線に耐えられず下を向く。一年生のなかにはこの場面で告白した人もいて、盛り上がりがまだ冷めていないらしい。
何を言うべきか、考えれば考えるほど答えが絡まっていく。
先にマイクを口元に当てたのは由良くんだった。私の焦りに気づいてしまったらしい。
何を言うのかな、なんて不安になりながら由良くんを見たら、
いつかの夜みたいに、微笑んだ。
あの日も、彼が消えてしまいそうに見えて手を伸ばして、ぬくもりに触れて。
そうだ、私はその時───
「弥衣、明日も隣にいて」
メモしていたことは全部忘れてしまった。
感謝も謝罪も彼が求めていないのは知っていて、じゃあ何が聞きたいんだろうって考えても出てこなくて。
今わかった。



