いきなり立ち上がった由良くんに視線を向けると、由良くんも私の方を向いていて。
「俺もやってあげる」
「…え?」
そう言って笑った。満面で笑ったの。この状況で、こんなに暗くて重たい話をして、笑う?
私はこの時、彼を「強い」と思った。
全然、違ったのに。
…そう答えを出したのはまだ先の話だから、隅に置いておく。
「そのノート。桜名さん一人でやってたら、全部叶えられる時にはヨボヨボのばーさんになっちゃうよ」
確かに。というか、間違いない。ちょうど昨日、同じことを考えていたり。
十個叶えた時、おばあちゃんになってるかもって。
優羽は基本優しくて私に甘いけれど、時々ムチがくるときもある。
ご飯を食べなさい、なんていうのは最初だけなんだと思う。
もっと難しいお願いが書いてある気がしてならない。
…でも、初対面の私にどうして協力してくれるんだろう。簡単なことでは無いのだ。買い物に付き合ってくれとか、消しゴムを貸してくれとか、そういうことを頼んでるわけじゃないのに。
これが終わったら私は消えるってことなのに、由良くんは止めずにむしろ応援してくれている。
不思議な人。



