落ち着かないと、私ちょっと今駄目かもしれない。
由良くんに可愛いって思われなくたって、私は平気だ。
冷静になって、流さないと...
「この前は私しか目に入らないって言ったのに。由良くんだって可愛くない。...ひとでなし」
「なんつった?」
間違えたと気付いた時にはもう口から出ていた。怖くて真正面にいる由良くんを見ることができない。
言葉遣いも声音も違った。こうやって話すようになる前、彼に苦手意識を持った時を思い出す。
氷よりも冷たいであろう由良くんの表情を想像して、まだ暑い教室の中で凍えてしまいそうだった。クラスが静まり返っている。
丁度よく鳴ったチャイムに助けられて席に戻れたけれど、幸か不幸か、それから放課後まで一言も言葉を交わさなかった。
「───で、桜名さんはなにがいい?」
衣装係のクラスメイトに問われたのは、放課後のホームルームが終わったあとのこと。
クラスの出し物で着る衣装が大体出来てきたみたいで、服の数に応じて担当を決めているらしい。
余り物でいい、と前の日に伝えたけれど、何故か選択数が多い。
赤ずきん、白雪姫、アリス。どれも可愛いものばかりで迷ってしまう。メインの人物では無いものでは、シンデレラの魔法使いなんて衣装もあった。



