あの日、屋上に来たのは偶然じゃなかった。今思えば屋上に来たのだって疑問ばっかりだ。時間割りではあの時間、旧校舎に行く授業は無い。
優羽に私の事を頼まれたから屋上に来た。
そのほうがパズルがはまるみたいにすんなり受け入れられた。
『由良さん?あの、俺とどこかで会ったことありますか?』
前の雨を思い出す。睦季がそう聞いたのは、過去の薄まった記憶のなかで由良くんが存在していたからだ。
睦季と優羽が昔会っていたのは知っていた。優羽が覚えていたから。すごい再会の仕方だね、なんて話していたのが懐かしい。
「由良さん、優羽さんと一緒で抜群にバスケ上手くて目立ってたから覚えてた」
由良くんに聞かないと本当のことなんてわからない。
今まで全部、作りものの表情だったら。言葉だったら。
心をまるごとくれるみたいに、ひどく優しくて溶けそうな笑みを向ける由良くんを。私の思い出を由良くんでいっぱいにして、
私はその笑顔を信じられなくなる。
名前の付かない素敵なもの、見つけられたはずなのに。



