だからといって彼は梃子(てこ)でも動かないだろうから、私は急いでシャワーを浴びることにした。
例えば信号が点滅して急かそうとしても、私は走らなかった。もう無理だから、とまだ点滅しない青色を遠目で見て歩幅を小さくすることもある。
そんな私がまさか家のシャワーで急ぐことになるなんて、と小さく笑った。
「────バスケ部?」
「そう、由良くんとっても上手でね、エース候補なんだって。色々聞いて...睦季?」
私と交代で由良くんがシャワーを浴びている時、彼の話をすると、睦季の様子が変に感じる。
来年は私と同じ高校に入りたいと何かの会話の途中で言っていた。醤油とって、くらいの軽いものだったけれど、決して低い偏差値では無い。
姉に比べて出来が良くて困る。
睦季に意識を戻し、首を傾げた。バスケのことを教えてもらうのにいいかと口に出したのが不味かったのか。
途端、睦希ははっとしたように私を見た。
「なんでもない、そういうことなら今度ゆっくり話したいな」
「伝えておくね」
少しして、勉強してくるね、と睦希が部屋に戻ってすぐ入れ違いのようにリビングに戻ってきた由良くん。
何か変だと思いつつも、沸かしていたポットが湧きましたと訴えるように音が鳴る。
そうだ、由良くんにコーヒーを入れようとしたんだった。
もちろん、角砂糖の入った甘いものを。



