「弥衣体幹無いの?はい、手」
お手、みたいに出してくるけど、いつもの優しさが嬉しくてすぐに手を取った。
「あ、そうだよね、危ないよね。月穂も手繋ぐ?」
私達を見ていた瑞星くんは、爽やかな笑みを付けて月ちゃんに手を差し出す。
女の子の間では“天然プリンス”と呼ばれているほど鈍い瑞星くんが、月ちゃんの顔が真っ赤な理由に気付くはずもなく、きゅっと手を握った。
「どうしよう弥衣、私不自然過ぎたよね...」
更衣室の端っこのロッカーで、上だけ脱ぎっぱなしでうずくまる月ちゃん。
どうしたものかと考えるけれど、このまま一日中瑞星くんを避け続けたら、きっと月ちゃんは今日の夜後悔が溢れて眠れない。
この水着だって瑞星くんを考えて選んだはず。
「後輩の子に取られちゃってもいいの?」
「良くない!」
「あれ、外で瑞星くんと誰かの声がする...女の人かなあ?」
「っうそ!」
嘘、冗談。
おかげで月ちゃんは上下とも着替えられた。
今の私のやり方、少し由良くんに似てただろうか。近くにいるとその人の中身が移るって聞いたことがある。
ずる賢い考え方だったり、悪いとこばっかり貰ってきてしまったかもしれない。



