「…好きな人がいるの」
「そうなの?応援するよ!...どうしたの?上手くいってないの?」
きっとそれだけじゃない、そのもっと奥にある何かが月ちゃんの涙をつくっている。
月ちゃんは少しずつ、言葉を選ぶように話し始めた。
「...弥衣に言うの、迷ってて。弥衣が今前向いて頑張ってるのに、私だけ抜け駆けしてるように感じちゃって」
「うん」
「...でも、最近良い感じの子がいるって聞いて、焦って。
一人じゃどうにも上手くいかないから誰かに相談したいけど、私は絶対弥衣に頼りたくて...」
あの電話を思い出した。
私が初めて声を荒らげて、月ちゃんを傷つけた日。
慎重に口から出る言葉は、きっとそれが原因。
私の言葉が、人を変えてしまう。睦希のことだってそう。
...なら、私が変わったらいいんだ。
取り返しのつかない言葉も、行動も、これから私が変えないといけない。
「私、月ちゃんの力になりたい。抜け駆けなんかじゃないよ、頼ってくれて嬉しい」
私の手を引いてくれたのは、いつだって私の目印でいてくれた月ちゃんだったから。
「…瑞星くんだよね?月ちゃんの好きな人」
湯冷めしたような手をぎゅっと握る。俯いたまま縦に一回首を振ると、冷たい手とは真逆に顔が真っ赤になった。



