「毎日手伝い来てくれる子のおかげで余裕あるんだけど。なんかしたい事ある?」
「ほんと...?」
黒板の上に付いた時計で時間を確認した由良くんは、今日ずっと作っていたビスケットから手を離して私を見た。
目が合うのが久々に感じる。
「無いの?俺ある。夏休みの予定決めよ」
スマホをポケットから出すと、スケジュール帳を開いた。
見せてもらった画面には予定がびっしりで。
土曜日は全部埋まってしまっている。しかも、一日空いている日なんて今すぐ数えられるくらいしか無い。
それに、部活はわかるけど...
「バイト...?」
「あー...少しね。それより桜名さんどこ行きたい?俺暑いの無理だけど」
また、だ。
一歩踏み込むと三歩遠ざけられる感覚。
由良くんは都合の悪い話になると斜め下を向く。そんな癖も気づくくらい、私はたくさん由良くんに嫌な思いをさせているってこと。
これが私に関係のある話なら、何を隠しているんだろう。私はバイトの経験は無いし。
なんだろう、これ以上踏み込むの、ちょっと怖い。
「...四人で屋外プール」
「話通じてないね。いいよ、プールで」
由良くんは「ま、てきとーに」と空いている日に書き込み始める。



