「桜名さん」
すっかり聞き慣れた声に、夏音くんと平行だった私の温度が上がる。
「由良くん、実行委員の集まり?お疲れ様」
「うん、二人もお疲れ。どう、やっていけそう?」
由良くんは相変わらず表情筋が見当たらないけれど、目の前にいるだけで安心する。
分厚い書類は所々付箋が貼られていて、その安心は不安に変わった。
...倒れたり、しないだろうか
やっぱり少しでも負担減らしたいな。
でも、こちらはこちらで女の子が苦手な彼と仲良くなろう、なんて文化祭までに達成できるのかが心配だ。
「私は大丈夫だけど夏音くんが...」
「弥衣!」
ぐんと腕を引っ張られて、思わず目を見開き後ろにいた夏音くんのほうを見上げる。
...なるほど、由良くんにも知られたくないってこと?
「...な、夏音くんが格好良いから釣り合うか心配だなあって」
「はは、弥衣なら大丈夫だよ」
焦っていた夏音くんはどこへやら、王子様のような微笑みで返された。由良くんによって上がった温度はたちまち下がる。
「そっか。...あ、夏音、そろそろ部活。
俺まだ終わりそうに無いから休むって伝えておいて」
「了解。じゃあ二人ともまた明日」



