麻袋が一杯になるまでブルーベリーやブラックベリー、ラズベリーを摘み終わるとそれを紐で縛って肩掛け鞄にしまう。
 一仕事終えて木陰の下にある大きな石の上に座ったリズは、持ってきていた水筒を取り出すと水分補給をする。

 ついでに野菜サンドの包みを広げて食べ始めた。
「ふう。妖精さんたちのお陰でとっても質の良い木の実が手に入りましたし、そろそろ戻りましょう」
 休憩している間も妖精たちはリズの周りを楽しそうに飛んでいる。

 ソルマーニ教会でも三人の妖精以外の妖精と会うことはある。だが、一度にたくさんの妖精と遭遇するなんて滅多にないことなので、その多さに見入ってしまう。
(この人数の妖精さんが教会に押し寄せたら、大変なことになりますね)

 ヘイリーたちは妖精の姿を見ることができるので、一度に大勢の妖精が押し寄せたら腰を抜かすに違いない。
 彼らの驚く姿を想像してくすくすと笑っていると突然、森の奥から茂みをかき分ける音が聞こえてくる。

「何でしょう? 野ウサギ……にしては大きな身体です。クマはこの辺りに出没するのでしょうか?」
 クマ、或いはオオカミだった場合どうすればいいだろう。メライアは安全な森だと言っていたが魔物と同じでお腹を空かせた肉食獣が山から下りてきたのであればそれはそれで大変だ。