漸く発作のようなものが落ち着いたので改めて木の実を探し始めた。辺りを注意深く観察しながら歩いていると、青紫色をした実がついている木がたくさん現れる。

 近づいて実を確かめてみると、それはブルーベリーだった。
「わあっ、ブルーベリーがこんなにたくさん実っているなんて凄いです!」
 持ってきていた肩掛け鞄から四つ折りにした麻袋を取り出して、ブルーベリーを摘み始める。


 美味しそうなものを選んで摘んでいると、どこからともなくたくさん妖精が集まってきた。彼らはこの森に住む妖精のようでとても物知りだ。

『甘いブルーベリーは今摘んでいる木の隣だよ。是非持って帰ってね』
『あっちにはブラックベリーやラズベリーも実っているよ。甘酸っぱくて美味しいよ』

 いろいろな情報を提供してくれる妖精にリズは心から感謝する。だが、あいにく角砂糖を持ち歩いていなかったので、お礼ができない。

「ああ、ごめんなさい。折角教えてもらったのにお礼の角砂糖を持ち合わせていません」
 しょんぼりと肩を落とすと、妖精の一人が首を横に振った。
『いつも三人を通じて角砂糖をもらっているから大丈夫だよ』
『日頃の感謝を込めてリズに美味しい木の実を持って帰ってもらいたいんだ』

 日頃の感謝? はて、一体何のことだろう。
 リズは二、三瞬きをしてから首を傾げた。
 三人から角砂糖をもらっている。それはつまり、アクアとヴェント、イグニスの三人のことだろう。

(角砂糖を渡すといつもどこかへ行ってしまうので不思議に思っていましたが、あれは仲間の妖精に角砂糖を渡すためだったのですね。独り占めしているわけではなかったみたいです)
 妖精たちの話に納得がいったリズはお言葉に甘えて美味しい木の実の場所を教えてもらった。