「タクは私の初恋の人、青春の全て、そして……同志だった」
「同志……?」
誰からともなく湧き上がる声。
杏奈は隼人を伏し目がちに捉え、今一度上げた哀しそうな瞳で凪徒を見つめた。
「私だって……三ツ矢の一人娘だもの、それなりにプレッシャーはあったわ。けれど十代をストレスなくやってこられたのはタクのお陰だった……ずっと彼に助けられてきたの……彼が同じ立場で、同じレベルに立っていてくれたから」
「アン……」
凪徒は昔の呼び名で杏奈を呼んだ。
自分を映す潤んだ瞳と表情は、兄を慕い、その隣で笑っていた以前の杏奈に違いなかったから。
「……だから。私はタクを忘れないし、忘れたくない。彼が生まれて死んだ十月二十六日……その日をスタートにして、私はまた彼と共に人生を始めるの」
そう言ってうっすらと笑った杏奈は、とても幸せそうに見えた。
やがて隼人が彼女の手を取り、お互い見つめ合ってにこやかに微笑む。
「お、おやじはそれでいいのか?」
凪徒は分からなくなっていた。
杏奈の兄への想いは嬉しいが、それと父との結婚と、イコールには思えずにいたからだ。
「同志……?」
誰からともなく湧き上がる声。
杏奈は隼人を伏し目がちに捉え、今一度上げた哀しそうな瞳で凪徒を見つめた。
「私だって……三ツ矢の一人娘だもの、それなりにプレッシャーはあったわ。けれど十代をストレスなくやってこられたのはタクのお陰だった……ずっと彼に助けられてきたの……彼が同じ立場で、同じレベルに立っていてくれたから」
「アン……」
凪徒は昔の呼び名で杏奈を呼んだ。
自分を映す潤んだ瞳と表情は、兄を慕い、その隣で笑っていた以前の杏奈に違いなかったから。
「……だから。私はタクを忘れないし、忘れたくない。彼が生まれて死んだ十月二十六日……その日をスタートにして、私はまた彼と共に人生を始めるの」
そう言ってうっすらと笑った杏奈は、とても幸せそうに見えた。
やがて隼人が彼女の手を取り、お互い見つめ合ってにこやかに微笑む。
「お、おやじはそれでいいのか?」
凪徒は分からなくなっていた。
杏奈の兄への想いは嬉しいが、それと父との結婚と、イコールには思えずにいたからだ。