卒業式の後は2人であの公園に集まる約束をしていたので、僕は少し早めに向かった。

ベンチにはまだ澪の姿はなく、1人で座ってこの街を眺めていた。

僕はこの世界に生まれてからの事を思い出していた。

もう二度と会えない母親の顔、クズで最低な父親の顔、僕をいつまでも縛り付けているあの言葉、虐めてきたアイツらの顔、殴られた痛み。

そして、ばぁちゃんの顔、優兄さんの顔、芝山先生の顔、澪の顔、プラネタリウム、マフラー、あの日見た夕日。

この街に来てからの思い出の殆どに澪がいた。

僕の心にはいつも笑った澪がいて、澪に会えなかった日々はモノクロのように色を失っていた。

胸が締め付けられるように痛くて、ずっと傍にいたいと思える存在。

僕はこの気持ちを、感情を澪に伝えようと決心した。

━━きっと僕は、澪に恋をしている。

澪が走ってこちらに向かってきた。

手が震えて、上手く澪の顔が見れない。

「お待たせ〜!!ごめん、待ったよね。」

「ううん。大丈夫。」

そうは言ったものの緊張で暫くの間沈黙が続いた。

ぼくは意を決して澪に伝えようと口を開きかけた時、澪が先に声を出した。

「私ね、真昊に言わなきゃならない事があるの。聞いてくれる?」

僕は戸惑いながらも頷いた。

「真昊、前にuraさんが好きって言ってたでしょ?覚えてる?」

少し間を置いてから、澪が真っ直ぐ僕を見つめて言った。

「実はね、uraは私なの。私は歌い手として活動してる。そのアカウントがuraなの。」

内心驚かなかった。そう言われれば、歌詞も声の雰囲気も何となく澪に似ている気がしていた。

「…うん。なんかそんな感じ…だなって思ってた。」

「嫌じゃない?見えないからこその魅力があるって言ってたでしょ?中身が私でも嫌じゃない?」

「嫌なわけないだろ。会いたいとも会いたくないとも思ってない。でも、知りたいとは思ってた。だから、知れて嬉しいよ。」

「本当に?無理してない?」

「無理してない。……ねぇ澪、僕も話があるんだけど、聞いてくれる?」

「もちろんっ!!何?」

僕は澪にちゃんと体を向け目を見てちゃんと伝えた。