僕は芝山先生が何でそんな事を聞くのかわからなかった｡

でも､芝山先生の顔にはいつもの笑顔が消えていた事から､澪には何か秘密がある事を察した｡

｢澪に何かあったんですか？｣

｢ここに座って｡話したい事があるの｡｣

そう言って近くのソファーを指さした｡

僕はそこに腰を下ろした｡

｢詳しい事は言えないんだけれどね､澪ちゃんは皆とは少し違うところがあるんだ｡それでね､クラスで孤立してしまって､保健室に来るようになったの｡｣

僕は芝山先生の話を聞いて､驚いた｡

そして､あの日澪にぶつけてしまった言葉を今更ながらに後悔していた｡

｢上原君にお願いがあるの｡澪ちゃんのそばにいてあげて｡それで､話を聞いてあげて｡澪ちゃんは表ではあんなに元気よく笑ってるけど､本当はずっと独りで我慢して苦しんでるの｡澪ちゃんの事分かってあげられるのは上原君だけだと思うの｡｣

｢僕には無理です｡僕と澪がここに来なくなる前の日に､僕は澪に酷い事を言ったんです｡澪の気持ちなんて知らないまま｡だから澪は僕の事もう嫌いだと思います｡話してくれないと思います｡｣

｢そんなことないよ｡澪ちゃんがあんなに楽しそうに人と話してるの初めて見たの｡私とは話してくれるけど､何処か寂しそうな顔してた｡

でも､あの日上原君がここに運ばれた時1番心配そうにしてたのは澪ちゃんなのよ｡それから毎日上原君来てる？って聞いてきて｡上原君がここに来るようになってから澪ちゃんずっと笑ってて｡

きっと澪ちゃんにとって上原君は特別な存在になってるんだと思うよ｡だから大丈夫｡上原君なら大丈夫だよ｡澪ちゃんの力になって支えてあげてね｡｣

僕はそんなにも澪に気にされてたなんて気づかなかった｡

でも､僕にはそんな資格あるのだろうか｡

それに､澪はもう一度僕に会ってくれるだろうか｡