アイサレタイ症候群

「ねぇ、真昊。君はどうして笑わないの?」

澪は真顔でこちらを見つめてきた。

今までの僕だったら多分答えたくないと拒否をした筈。

でも何故か澪には話していいと思った。

話したいと思えた。

「長くなるけど、僕の家族の話聞いてくれる?」

「うん。聞くよ。」

僕は母親の事、父親の事、転校してきた理由も全部全部話した。

その間澪は黙って聞いてくれた。

「僕が笑わなくなったのは父さんの言葉があるから。」

そう。僕が笑えなくなったのは父さんのあの言葉のせいだ。

「父さんは僕が小学校に入学した時、僕に言ったんだ。お前のせいで母さんが死んだんだって。だから、幸せになる権利はないし、笑っちゃいけない。ずっと孤独で生きていくんだって。だから僕は笑っちゃいけないんだ。」

僕が一通り話し終わった後、少ししてから澪が口を開いた。

「真昊のせいじゃないよ。お母さんが亡くなってしまったのは絶対真昊のせいなんかじゃない。」

「僕のせいだ。僕が…」

「真昊じゃない。真昊のお母さんは…」

「僕のせいだって。」

僕は澪の言葉を遮って、声を荒らげてしまった。

それでも澪は話を続けた。

「真昊のお母さんは、真昊を産む事を自分で決めた。自分を犠牲にしてまで真昊に生きて欲しかったんだと思う。だから、真昊は何も悪くない。真昊は笑っていいんだよ。」

何も知らないくせに。

僕の何を知ってる。

母さんの何を知ってるんだよ。

皆、勝手な事ばかり言って。

「真昊は笑ったら、かっこいいと思うなぁ。」

うるさい。黙れ。話さなければよかった。

僕が勢いよく立ち上がると、澪は驚いた顔をして僕を見つめていた。

「やっぱり忘れてくれ。もう帰る。」

「待って。なんで?私はただ笑って欲しかった…」

「それが嫌なんだよ。僕の何が分かる。今まで僕がどんな思いで生きてきたか。お前には分からないだろ。」

「わかるよ。私だって…」

「何がわかるんだよ。お前みたいに毎日楽しそうに笑って生きられないんだよ。普通に、幸せな人生を送ってきたお前には、絶対に分からない。僕と澪とでは生きてる世界が違うんだよ。」

僕は勢いに任せて酷い言葉を澪に浴びせてしまった。

澪は、潤んだ瞳で僕を見上げ、

「…うん。私と真昊は違う世界で生きてる。でも、私は真昊の事1番分かってあげられる。」

「もういい。」

僕はその場を早歩きで立ち去った。