丁度、澪が御手洗から戻ってきた所で、バレなかった事に安心した。

「そろそろ上映時間だから、中に行こうか。」

「うん!!待たせてごめんね。行こ行こ!!」

澪は僕の手を握って入口まで引っ張った。

「そんなに急がなくてもまだ大丈夫だよ。」

「あ、そうだよね。痛かった?ごめんね。」

「いや、痛くはない。ほら、手貸して。」

僕にしては恥ずかしい事をしているなと内心苦笑しながら、澪の手を握り、今度はゆっくり進んだ。

席に着くと同時にシアター内が暗闇に包まれた。

澪は怖かったのか、僕の手を強く握った。

天井に星の映像が一気に映し出されると、さっきより幾らかはマシになった。

澪の強く握っていた手も少しずつ緩んでいった。

「ぅわぁ…綺麗。真昊、綺麗だね。」

「…うん。綺麗だ。」

「これ、山羊座だよ。私と真昊の星座。」

澪が指を指した先には星が線で繋がれて形が浮かび上がっていた。

確か、小学生で習った気がする。

澪の言う通り、これは山羊座の形。

「本当だ。」

すると、僕らの真上を流れ星が流れた。

まるで大雨が降っているかの様だった。

「そう言えば、昨日はこぐま座流星群のピークだったんだよな。」

「そーなんだ。真昊は物知りだね。やっぱり星好きなの?」

「ううん。好きでも嫌いでもない。けど、星は暴力も暴言もしないし、見えない時もあるけど、24時間年中無休で空にいる。そう考えると独りじゃないんだなって思える。」

「…そっか。24時間年中無休か…。確かにそうかもね。星は裏切らないもんね。心が無いからね。人間もそうだったらいいのに…。」

そんな事を言う澪の横顔は暗くてよく見えなかったけど、悲しそうな、苦しそうな顔をしていた。