そして今、僕はベットの上に身を投げ出してスマホを弄っていた。

このスマホは優兄さんが僕が中学に入学する時にくれたものだ。

父親に見つからないように隠していたが、今はその必要がなくなった。

僕はあまり動画は見ないのだが、唯一気に入っているネット活動者がいた。それは、“ura(うら)”だ。

uraさんの歌を初めて聴いた時、僕の心は理解のできない感情に支配された。

なんと言うか、悲しいや嬉しい、綺麗等という簡単な感情では無い。

もっと複雑で難しい感情が僕には分からなかった。

元々感情を表に出さずに生きてきた為理解がもっと難しい。

uraさんは歌声が美しく、天然水の様に透き通っていた。

なのに力強い為一つ一つの言葉が心に残る。

1番の特徴はuraさんについての情報が全くないということ。

uraさんは顔を出さず、声は加工してあり、年齢も性別も何も分からない。

uraという名前で活動していること以外何も。

でもそれが多くの人を魅了している理由だと思う。

何も分からないからこそuraさんの歌は多くの人に届いている。

僕はそんなuraさんが好きだった。