お気に入りの窓辺で読書をする。

これが私のルーティンみたいなものだった。

けれど、今日は違う。

何が違うかと言うと、生徒が私以外にも居るということ。

10分前、深刻そうな顔をして駆け込んできた私の担任の背中には、見かけない男子生徒が力なく眠っていた。

綺麗で整った顔立ちで、一瞬女子かと思ったが、男子制服を着ていたから男子なのだと分かった。

私はあまり人間には興味が無い為、いつも通り読書に戻ろうとした。

けれど、どうしても気になって仕方なかった。

私と同じようで違う雰囲気を纏う彼に目を奪われてしまった。

衷先生は彼の手首に手を当てたり、口に耳を近づけたりした後、デスクの上の電話で誰かに電話をした。

その後、担任と話をしに廊下へ出た。

私は暫く本の上から目だけを出し、寝息を立てる彼を見つめた。

改めて見ると、女の子の様な顔をしていた。

でも、私が目を奪われたのは見た目じゃない。彼の雰囲気だ。

私とは違っている様で同じ様な。

矛盾している事は理解しているが、それ以外の言葉では表せない、不思議なオーラを放っていた。

私は我慢出来ず、彼の眠るベッドへ近づいた。

彼は額に汗を浮かべ、苦しそうに顔を歪めていた。

魘されているのか。

私は、彼を助けたいと思った。

その苦しみから解放してあげたいと。

いつの間にか衷先生は私の後ろに立っていた。

「ふふ。加上さんは上原君に一目惚れした?綺麗な顔してるもんね。」

「ううん。違うの。その…表しにくいんだけど、この人、私と同じで違う感じがする。なんでだろう。」

「んー。難しいね。でも、話してみれば分かるんじゃないかな。目が覚めたら話してみたら?」

そう言って、デスクに座る衷先生に、私は小さく頷き、彼の顔に目を移す。

こんなに見つめられてたら困るだろうと思い、元の場所に戻ろうと足の向きを変えた。

それから、目を覚ました後、いきなり人の目があったら驚くだろうと思い、カーテンを閉めた。

「衷先生。この人、苦しそう。魘されてるの。大丈夫?」

その直後、カーテンの奥からバタッと音がした。

私はびっくりして速攻でいつもの窓辺に隠れた。

さっきみたいに適当に本を開き、本の上から目を覗かせた。

衷先生が少ししてからカーテンを開けると、彼は肩で息をしながら周りを見渡していた。

衷先生はお茶を差し出し優しく肩を擦りながら何か話していた。

一通り話し終えたのか、衷先生がデスクに戻った時、彼の視線が私を向いた気がして、慌てて本に目線を戻した。

バレてないか不安だったが、何も声をかけてこないという事は気づいていないのだろう。

それから直ぐに男性が保健室に入り、涙目で彼を抱き締めていた。

あぁ。彼は愛されてるんだなぁ。そこが私とは違うのかな。