父親はと言うと、今思えば本当にクズだと思う。

でもあの頃の僕はそんなクズな男でさえたった1人の家族だった。

僕が中学3年、ジリジリと日差しが照りつける夏の日に父親は死んだ。

僕が病院に着いた時にはもう遅かった。

父親は暗く冷たい部屋の真ん中に眠っていた。

白い布に包まれた身体は青白くて硬かった。

死因は長年摂取し続けたアルコールとタバコだった。

元々肝臓が悪かったくせに医者の話を聞かずに父親は大量に摂取し続けていた。

そのせいで父親の身体全体がボロボロになり限界寸前だったらしい。

父親は死ぬ前、近所のコンビニで酒とタバコを買い込んでいたのか死体の傍には買い物袋が2つ置いてあった。

その帰宅途中に突然倒れ、通行人が通報してくれたんだそう。

しかし、運ばれてきた時点でもう手遅れだった。

蘇生は難しく、倒れた後即死だったと医者に後から聞いた。

その後の手続きやら葬式やらは全部ばあちゃんがやってくれた。

僕はただ従兄の優(ゆう)兄さんの傍で突っ立ってる事しか出来なかった。

涙も悲しいという感情すらも出てこなかった。

周りはそんな僕を見て“薄情ものだ”とか“なんて親不孝なのだろう”とかヒソヒソと話していたがどうでもいい。

僕の家の事情を知っているのかいないのか分からないが、今まで1度も助けようとしてこなかったくせに。

今の今まで父さんの事なんて忘れていたくせに。

僕は親戚たちが話し合い、ばあちゃんに引き取られることになった。

ばあちゃんの家には優兄さんも住んでいるから安心だ。

僕は直ぐに家の荷物を整理して、家を売り、ばあちゃんの家に引っ越した。

丁度夏休みに入ったところだった為引っ越すにはキリが良かった。