そんな生活して2週間が過ぎた頃、家に保健室の先生が来た。あの時の女性だった。

その女性は芝山 衷(しばやま こころ)と言うらしい。

芝山先生は僕と話がしたくてわざわざ家まで来てくれた。

家には2人共出掛けていた為僕以外誰もいなかった。

僕はリビングに案内して、適当に座るように言った。

お茶を運んで先生の向かい側に座ると視線が気になり少し不安になった。

僕がそわそわしていると、芝山先生は少し微笑んで話を始めた。

「久しぶりだね。ちゃんと食べてる?少し痩せたでしょ?」

僕は返答に困り、小さく頷いた。

そんな僕を気にせず話を続けた。

「学校、怖い?あれから来てないでしょ?少し心配で。上原君は迷惑だと思うけど、少し私から提案したい事があってね。」

そう言ってお茶を1口飲んだ。

「もし良かったらでいいんだけどね。教室に行くのが怖いなら、保健室登校はどうかな。ほら、この前奥の方に1人女の子がいたの覚えてる?その子もね教室に行けなくて保健室に来てるんだ。」

そういえば居たような。

それを聞いて納得した。

授業中なのに保健室にいた理由はそういう事なのか。

確かに保健室なら視線が少なくて楽かもしれない。

でも2週間以上もろくに外に出ていないのに大丈夫だろうか。

今だって少し怖いのに。

「今すぐになんて言わないわ。でも考えてみてほしいの。そういう選択肢もあるよって事だけを伝えに来ただけだから。もし保健室に登校してみたいなって思ってるのに1人が不安だったら私が迎えに行くことだってできるわ。上原君には沢山の選択肢がある。だから少し考えてみて?急がないから。」