アイサレタイ症候群

大丈夫。普通を演じるんだ。僕ならできる。

今度こそは失敗したくない。

心臓が痛いくらいに脈打っていて、僕は今面白いくらい緊張している事に気づく。

目の前の扉が開き、菅原が僕を手招いた。

少し深呼吸してから僕は震える足を動かした。

教室の前に立ち自己紹介をしようと口を開きかけた時、僕は今までに感じたことのない感情に呑み込まれた。

目の前に広がる沢山の視線が僕の心に鋭く刺さる。

僕は普通に見えているだろうか。

前の様に失敗はしてないだろうか。

僕は、普通を演じられているだろうか。

突然水に溺れたかの様に息が苦しくなり、身体が震えて、立っているのかも分からなくなった。

目の前の視線が更に鋭くなった。きっと普通に見えてないだろう。

平衡感覚を完全に失った僕は意識を手放した。