冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

その晩、豊さんは深夜に帰宅した。未来の寝かしつけの最中だった私は未来を抱いたまま、リビングに出た。

「ああ、まだ起きていたのか」
「未来が寝たり起きたりで。睡眠が安定しないようです」

そんなふうに答えながら早速日中の母との話を切り出した。週に何度か奥村フーズを手伝いに行きたい、と。
ジャケットを脱ぎ、ダイニングの椅子にかけながら、豊さんは険しい表情だ。振り向いて答えた声は固い。

「それは賛成しかねる」
「駄目……ですか」
「行く必要がない。きみにも未来にも不自由な生活をさせる気はないと言っている。実家とはいえ、金銭を稼ぐ必要はない」

そうではないのだ。
金銭目的というより、束の間でも育児から離れたい。大人と会話したい。

この部屋と未来が世界のすべてなのは幸福なはずだった。それなのに、息が詰まりそうになっている。こんな自分でいたくないから、変化がほしい。

しかし、それを豊さんに言ってどうなるのだろう。
彼に育児からの解放を求めるのはお門違いだ。そして万が一、いつか未来の真実が露見した場合、私が育児から離れたがっていたというのはマイナス要因になる。それを理由に未来を取り上げられてしまうかもしれない。

「すみませんでした。私がここにいることは、大事な役目ですものね」

未来がぐずぐず言い始めたこともあり、私は彼に背を向け寝室にしている和室のふすまをあけた。
豊さんの足音がしばらくしていたけれど、やがて聞こえなくなった。疲労感が深い。
ああ、何も考えたくない。いつの間にか私も未来も眠っていた。