冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

未来を望んで産んだのは私だ。豊さんに黙って、ひとりで育てようと決めた。
それが、環境が変わった途端にめげてしまうなんて。自分が情けない。
未来を愛しているのに、ひっくり返って大泣きしている未来を咄嗟に抱きあげられない瞬間がある。手が止まり、思考が止まってしまう。
すぐに正気に戻って「ごめんね」と抱いてあやすけれど、あの暗い感情が私の心の底にあるのだと思うと怖い。

母から電話があったのはそんなときだった。

『それなら、奥村フーズの手伝いでもさせてもらったらどう?』

雑談の中で、日々の疲労感と孤独感をぽつりともらしただけだったけれど、娘の異変は母には筒抜けのようだ。

「でも、未来がいるし」
『未来ちゃんは私が見てるから。週何度か、パートの扱いにしてもらってお勤めするの。お父さんに話してみるわよ』

母の提案はかなり魅力的に思えた。
週数時間でも未来と離れられる。我が子に負の感情すら覚えてしまいかねない今の私にとって、娘とわずかでも距離ができる瞬間はありがたい。

「豊さんに相談してみるね」

そう言って電話を切った。心が少し軽い。希望が見えたような気持ちだった。