翌朝は雨の音で目覚めた。
眠る未来をそのままにそっと和室を出る。無人のリビングは薄暗く、雨音が響いていた。
廊下の向こうでドアが開く音がする。間もなく豊さんがリビングに姿を見せた。

「おはよう、明日海」
「おはようございます」

お互いに照れくさくて視線をそらしてしまう。長い間、思い合っていたという真実を知ったのは昨夜。
未来が眠ってしまった後、私もつられるように眠ってしまい、結局昨日の外出の理由などは説明できずに終わってしまった。正直に言えば、眠ってしまってよかったのかもしれない。

あのまま未来が起きなかったら、私たちは情熱に任せて身体を繋いでしまっていた。
豊さんが私を求めてくれるなら、それは嬉しいけれど、さすがにちょっと進展が早すぎだ。

「あの、豊さん」
「未来はまだ起きないか。コーヒーを淹れよう。今日の予定でも決めながら」

豊さんがキッチンに入り、コーヒーメーカーに豆をセットする。いつも朝はインスタントだけれど、コーヒーメーカーはあり使うのは初めてだ。
雨の音とコーヒーメーカーの音。静かな土曜の朝。

「明日海、きみと正式に入籍したいと思っている」

私は顔をあげ、カウンターの向こうの豊さんを見つめた。

「未来のこと、きみの口から確認を取っておきたかった。俺の実子だから、養子縁組にしてしまいたくなかった」
「だから、入籍を思いとどまっていたんですか」
「ああ」

未来が他の男性の子ということなら、養子縁組。だけど、内縁関係の夫婦の子なら実子として同じ戸籍に入るのだ。それを考えて、記載した書類を提出しないでいたのだ。