金曜日の夕方、急にドユンからそんな電話がかかってきたの。夕食をこれから作ろうと張り切っていた私は、ただ戸惑うことしかできなかった。

「えっ？出張ってどうして？どこまで行くの？」

「ごめん。もうすぐ電車が来ちゃうから、また後で連絡するよ。日曜日には必ず帰るから！」

そう一方的に言われ、電話は切られる。電話越しに聞こえてくる機械音を聞きながら、私は呆然とし、同時に不安にもなった。

今まで、ドユンが急に「出張」と電話をしてきたことなんてない。それに、ドユンは一方的に自分の言いたいことを話して電話を切る人じゃない。いつも私の言いたいことも言わせてくれる。

「ドユン、どうしちゃったの……？」

「たかが一回」のことだとみんな思うよね。だけど、その「一回」が私の胸を騒つかせている。本当に忙しくて電話を切ったのか、それとも何か後ろめたいことでもあるのか……。

「考えすぎ、だよね」

ドユンも日曜日には帰ると言っていたし、記念日に喜んで貰えるように準備しておこう。そう決めてクローゼットのドアを開ければ、買ったばかりの花柄の華やかなワンピースが目に映る。