「ここみちゃん」
 
 ……え?
 あたしは雷に打たれたみたいに、立ち尽くす。

 今の声、もしかして……。

「ここみちゃん、おはよ」

 あたしはおそるおそるふり返って……。

 うまく息ができなかった。
 何か言おうと思っても、声が全然出てこない。
 白い髪の毛。キレイな顔。やわらかな声にほんの少しの毒が混じる。

「と、透くん……?」
「それ以外の、誰に見える?」
「透くんなの?」
「だから、そうだってば」

 透くんはクスッと笑った。

「相変わらずバカみたいな顔。――元気だった?」

 あたしはきっと今、すごく不細工な顔してる。だって涙が勝手に出てくるんだもん。くやしい。でも、うれしい。ぐちゃぐちゃの感情で、あたしは笑う。

「ここみ! ちょっとちょっと! この人! だれ!?」

 咲綾があたしにかぶりつきで質問をする、その咲綾に透くんは王子スマイルでにっこり笑った。

「おはよう。倉橋透です」
「えっ!? 倉橋……って、倉橋センパイのご兄弟ですか?」
「そうだよ。双子なんだ」

 キャーっと黄色い悲鳴を挙げる咲綾の目がキラキラと輝いている。うん、わかるよ咲綾。あたしも最初そうだった。

「おい、透! 先に行くなって言っただろ!」

 昭くんが息せき切ってかけてくる。咲綾はもう大変だ。目をギラギラに輝かせて、あたしにぐっとアイコンタクトを送ってきた。

 いわく、あとでぜったい詳細聞くからね! ってやつ。

「ここみ、おはよう」

 昭くんは今日も絶賛ぶっきらぼうだ。透くんとおそろいの制服の襟元をゆるめ、ふうと息をつく。

 ……ん?

「透くん、制服……? なんで?」
「うそ、今気づいたの、ここみちゃん」

 透くんがプッと吹き出した。

「僕だって学生だからね。学校くらい通ったって罰はあたんないでしょ」
「え!? 学校に……!?」
「そんなにおどろかなくてもいいじゃない」

 あたしは思わず昭くんを見た。昭くんは、こくんとうなずく。