あたしは歩いた。歩きながら、胸の中で、めらめらと何かが燃えているのを感じていた。

 なんでいきなり視えなくなったのか、あたしにはわからない。どうしたら視えるようになるのかもわからない。でも、あたしは咲綾の時みたいなことはぜったいにイヤだ。

 あたしは、あたしの大切な人を助けたい。だから力を使おうと思ったんだ。

「うなぎ」
 頭の中のおキツネさまに声をかけた。
「あたし、ぜったいあなたを諦めないからね」

 そのとき。あたしの頭の中で何かが光った気がした。はげしい頭痛があたしをおそう。痛い。頭が割れちゃうくらい、痛い!

 目の前の風景が二重に見える。その風景の中で、うっすらと光る赤い光が視えた。あれは、うなぎだ。うなぎが苦しんでる。この頭の痛みは……うなぎが苦しんでいるからなの?

 立っていられなくなって、あたしは道にうずくまった。
 とつぜん、パンっと音がして、あたしはハッと目を見開いた。

 ボディーバッグにつけていたお守りが千切れている。ウソのようにおさまった頭痛と、千切れたお守りに、あたしはしばらく呆然としてしまう。
 なにが……起こったんだろう。

「……帰らなきゃ」

 あたしはふらつく足で、なんとか立ち上がると、お守りを拾った。

「……え?」

 そのお守りに、なにか変な感じを受けて、あたしは立ち止まった。お守りをじっくり見る。透くんがくれたお守り。この中から、すごくイヤな予感がする。

 開けちゃいけないって、透くんは言ってたけど……。

 ううん、自分のカンを信じよう。心の中で透くんにあやまって、あたしは、意を決してお守りを開いた。

「――なにこれ」
 お守りの中には、木でできた札が入っていた。その札に描かれていたもの。それは、大きな目、だった。そして、その目をふさぐように。

 赤茶色のバッテンが記されていた……。


  ◆◆◆


「どうしたの、ここみちゃん」
 翌日。あたしは倉橋家を訪れていた。