「あら、そうなの? やだ、早合点しちゃったのね」
 覚さんはうれしそうにふふっと笑った。

「で、アタシにどんなご用事?」
 あたしは息を吸う。大丈夫、ちゃんと言える。

「あの、あたし、もっと強くなりたいんです」
「強く……?」

 覚さんが目をぱちくりさせる。

「はい。あたし……その……視えるだけじゃなくて」

 話しながら、あたしは昨日のことを思い出していた。あのときみたいな気持ち、もう二度と味わいたくない。

「みんなを守りたい。そのための力が……ほしいんです」

 覚さんは、目を丸くした。そのままほおづえをついて苦笑する。

「本当は、あんまりこっちに来ない方がいいのよ?」
「――でも」
「あらかた聞いてるわ。昨日のことも、その前のことも。だから、ここみちゃんが責任を感じてそう思ってるなら、やめたほうがいいのよ」

 優しい顔をしているけど、覚さんの目は真剣だった。
 だからあたしも真剣に答える。

「責任を感じているから、じゃありません。あたし、昨日……自分が何もできなかったことが、すごくくやしくて。あたしがもっとなにかできたら、ちゃんと全部守れたんじゃないかって……」

 咲綾が大ケガをする前に助けることもできたかもしれない。透くんが倒れるまで力を使わなくても手助けできたかもしれない。昭くんがあの黒い影に切りかかったときも、助太刀できたかもしれない。

「覚さん、あたしと石の相性がいいって言ってくれましたよね。訓練すればあたしだけのおキツネさまを呼ぶことができるかもって。あたし、やってみたい。訓練して、もっと強くなりたいんです!」
「――もっと怖いめにあうかもしれないわよ」
「がんばります」
「大ケガしちゃうかも」
「しないように気をつけます」
「――死んじゃうかもしれないわよ」
「……それは、イヤですけど」

 でも、とあたしは言葉を重ねる。