今まさに扉を開けて中に入ってきた人を指し、覚さんはニコニコ笑う。

 第一印象は、「キレイな人」だった。すごい美人。長い黒髪をきゅっとポニーテールにしていて、ボーダーのティーシャツとジーパンっていうラフな服装なのに、それがとてもよくにあってる。

 カッコいい女の人だ。

「はいはい、覚。アンタいつもとつぜん来るけどさ、デートにバックヤード使うのはやめてよね?」
「やだ、デートだなんて! この子にアタシじゃ役不足」
「そうね、こんなかわいい子、私がお相手したいくらい」

 明るく笑ってそう言うと、お姉さんはあたしの前にお冷を置いた。

「私、楓っていうの。よろしくね」

 まぶしい笑顔。覚さんのお友だちってだけあるかも。この人の周りって、みんなこんな風に明るいのかな。

「アタシはいつものやつね。で、この子には新作のアレをお願い!」
「新作のアレ?」
「そ! ここみちゃん、フルーツ好きでしょ? アタシのとっておきを食べてもらいたいの」

 すごい、なんでわかったんだろう。
 楓さんはクスクス笑うと、「はいよ!」と言ってドアから出ていった。

「ね、ここみちゃん」
 二人きりになると、覚さんは急に真面目な顔になる。

「あのね。ちがうからね」
「え?」
「透のことよ。ここみちゃんが責任を感じることはないの。透が決めて、透がやったことなんだから。ね?」

 あたしは思わずうつむく。すごいな、覚さん。あたしの考えてること、全部わかっちゃうみたい。
 覚さんはほおづえをついて、にこっと笑いかけてくれた。

「そのあたりのこと、昭もわかってくれるといいんだけどね。……あの子も気にしいだから」

「昭くん?」