指先が、石に触れたとき、あたしは熱い何かが体の中をかけめぐった気がした。まるでアツアツの紅茶を一気にのどに流しこんだみたいに、かっと喉から体の奥までが熱を持つ。

「わっ!?」
 石が真っ赤に光ってる!
 光がどんどん強くなって、あたしは思わず目をぎゅとつむる。
 目の奥で、光がはじけて――……始まったときと同じくらい唐突に、体の熱さが引いていった。

 あたしはおそるおそる目を開いて……。

「……え?」

 ドキリ、と胸がざわめいた。
 お社の後ろに、誰か、いる。
 人? でも、さっきまで誰もいなかったよね。

 なんだかイヤな予感がした。こんな森の奥に、しかもお社の後ろなんかでなにしてるんだろう。関わらない方がよさそうだし、気づかれないうちに帰らなきゃ。
 くるっとお社に背を向けた、そのとき。


「ヒヒッ」


 と、笑い声が聞こえた。

 あたしは悲鳴を飲みこんだ。
 笑っ……た?
 ヤバい、ほんとにヤバいかもしんない。とりあえず、逃げよう。そっと足を動かして、刺激しないように……!
 足を一歩踏み出した。そのあたしの耳もとで、また。


「ヒヒッ」


 と声……。

 うそでしょ、なんでこんなに近いの。
 あたしは浅く息を吸った。心臓がバクバクして、冷や汗が体中からふきだした。
 すぐ後ろ。息がかかるくらいの距離に、誰かがいる。

 どうしよう、どうしたらいい……!?

 あたしは、ゆっくりと振り返って……。

「ひっ……」



 目が、あった。