とは言ったものの、あたしも今日、すでにめちゃくちゃ怒られてるわけで。だからお母さんやお兄ちゃんには内緒で、こっそり家を抜け出した。

 夏が近いから、七時をちょっと過ぎたくらいじゃまだそんなに暗くない。だから、人気のない神社が目的地でも、まあ、ぎりぎりセーフかなって思ったんだ。


 お目当てのサイフは、神社のさい銭箱の横に転がっていた。
 あたしは思わず笑ってしまう。そうだ、咲綾ったら、おさい銭入れるのに五円玉探して、サイフをひっくり返してたっけ。そのときにここに置きっぱなしにして、そのまま忘れちゃったんだな。

 無事サイフも回収できて、それじゃあ帰ろう、と思ったときだった。
 あたしは、ふと何かに呼ばれた気がして顔を上げ、振り返って神社を見た。

 ……気のせい?

 神社の奥は、こんもりとした森になっている。その森がなんだかむしょうに気になって、自分でも変だなと思いながらも引き返すことにした。

 お社をぐるりと回る。神社の真裏、森に続く細い道の奥のほうで、何かがキラリと光ったような気がした。
「なんだろ……」
 まだ明るいとは言っても、森の奥はうす暗くて気味が悪い。それでもなんとなく、確かめなければいけないような気がして、あたしは足を踏み入れた。

 細い一本道をてくてく歩くと、小さなお社が見えてくる。
 知らなかった、こんなとこにお稲荷さん。あたしが背をかがめないとくぐれないくらい、小さなボロボロの鳥居。お社の脇には耳の欠けた狐が一体だけ。苔で半分緑色になっていた。

 そのお社の前に、光る丸い石が置いてあった。
 さっきの、キラッと光ったのはこの石だったんだろう。あたしの握りこぶしと同じくらいの大きさで、ツヤツヤしてて、水晶みたいに透明だった。

「キレイ……!」
 あたしは思わずつぶやいて、そっとその石に手を伸ばし――。