「いや……。悪かった。そうだよな、こういうのになれてなかったら、考えるのも無理ないな」
「……え?」

 昭くんの顔が、あきれ顔から真剣な顔に変わった。そのままなぐさめるようにあたしの肩にぽん、と手を置く。

「あまり霊のことを考えるな。力を持ったことで、お前も霊から見えやすくなってる。同情したり、悲しんだりすると、よってきてしまうんだ」

 その言葉に、あたしはサッと血の気が引いた。
 それって、つまり……。

「今のって、じゃあ、あたし……」
「ああ。お前の周りに霊が集まってきてたんだと思う」
 ……そっか。あたしがあの子のことを考えたから。胸がまた少し痛くなる。
「難しいことかもしれないけど。線を引くように努力しろ。それがお前自身を守ることにもなる」

 もしかして、とあたしは昭くんを見た。
 視えない昭くんは、必要以上に霊に入れ込まないように普段から気を張っているんじゃないだろうか。だとすると、昭くんの言葉の悪さは、自分を守るため……。

「立てるか? 移動するぞ」
「え? どこへ?」
「裏の森だ。……事情は歩きながら話す」
 そう言って、来た道をすたすたと戻り始める昭くんの背中を、あたしは見つめた。
 うまく言葉には言い表せないせつない気持ちが、あたしの胸の中にひたひたとわき上がっていた。


  ◆◆◆


「神さま!?」
「そう」

 神社を離れたあたしたちは、社をぐるっと回って裏の森の入り口についた。昨日と同じ。一本の細い道が、奥に伸びている。

「お前が視た女の人の影は、神だ」
「なんで、そんなことが分かるの?」
「あの神社で祀っている神が、子どもを守る神だったからさ」

 昭くんは淡々とそう語る。