神社は静かだった。こうしていると、まるで今までのことがウソみたい。風が木のこずえを揺らして、石だたみの境内にきらきらと木もれ日がこぼれている。
 なんだかフワフワして、くらくらしてきて、あたしはちょっとだけ目をつむった。

 さっきの子ども……。かわいそうだったな。首から下が血まみれになっていたけど、なんであんな姿になっちゃったんだろう。
 女の人は、この子を見つけて、って言っていた。あの人がお母さんなんだろうか。じゃあお母さんも亡くなっちゃっているってことなのかな……だとしたら、すごく……。

 そんなことを考えていたときだった。

 急に、ずん、と体が重くなる。背中から腰にかけて、なにか冷たいものがからみついているような気がする。

 なに、これ。
 あたしは目を開けて、あわてて立ち上がろうとした。

「……!?」

 立ち上がれない。がっしりと誰かに体をつかまれてるみたいに、ベンチから動けない。
 周りには誰もいなかった。当然、あたしを押さえつけている人なんているわけない。
 でも、動けない。

 どんどん体が寒くなる。もう夏なのに、さっきまで少し汗ばむくらいだったのに、あたしの体はどんどん冷えていく。なに、これ、真冬みたい。あまりの寒さに、カチカチと歯がなった。あたしは目をぎゅっとつむる。目の奥で赤い光がぱちぱちと舞っていた。

 怖い……寒い……!
 だれか、助けて!

 パンっと手を叩く音が聞こえて、あたしはすっと体が楽になる。おそるおそる目を開けると……昭くんが、あきれ顔でそこに立っていた。

「念のため聞くけど。大丈夫か?」
「えっと……うん」

 あたしは呆然としてしまう。さっきまで確かに感じていた寒気が、どこかに行ってしまってる。