「えっ、そうだけど……なんで知ってるの?」
 ちょっとおどろいた。あたしの通ってる中学校は生徒数が多い。この市だけじゃなくて、となりの市の小学校からいろんな人が入学してくるから、正直、自分の学年にいるを覚えるので精いっぱいなのに。

「そりゃ。お前、しょっちゅう神社に来ては、なんやかんや友だちとかとしゃべってるだろ。全部つつぬけなんだよ」

 神社……って、ああ、昨日の!

「昭くんも、神社によく行くの?」
「……石を調べてたからな」
 不機嫌そうに昭くんは言った。ヤバ、これ地雷だったかも。
「それなのに、なんであの日道に迷ったんだ……。おかしいよな……?」

 あ、ダメ、これ話題変えないとまたあたしに八つ当たりパターンだ!

「あ、昭くん! それで、あたしは具体的に何をすればいいの?」
 昭くんは目をぱちくりさせ、咳払い、ひとつ。
「ああ。お前には、その狐の窓を使って霊の正体を見極めてもらいたいんだ」
「霊の、正体……」

 小走りで走るあたしに気を使ったのか、昭くんは歩調をゆっくりに変えてくれた。
 こういう気づかいはできるんだ……。口悪いけど、ちょっとだけいいとこもあるじゃん。

「お前の力は霊視能力だ。つまり、この世ならざる者を視ることができる。今から俺たちが行く場所で、狐の窓を使ってみてほしい」

 でも、それってさ。
 あたしは昨日のことを思い出す。また、ああいうの視ちゃうかもしれないんでしょ。こりごりなんだけど……。

「大丈夫だ」

 あたしの心を読んだみたいに、昭くんはうなずく。
「もし何かあっても、俺がなんとかする」
 昭くんはギターケースを背負いなおす。


 そうこうしているうちに、あたしたちは中学校の前を通りすぎ、ぐるりと塀を回って裏門の方へ出た。校庭でクラスメートが体育の授業をしているのが目に入って、あたしはあわてて昭くんの影にかくれるようにする。