「まだあたしは大橋宮だよ。それに、お礼はちゃんとしたいの」

あたしにとって八城家の人達は恩人だから。

こんなあたしに、存在意味を教えてくれた。

「あ、俺と澪桜の婚約も父さんが正式にもう一度受理してくれるらしいよ」

「……沙織さんとの婚約は、もう無いの?」

「うん、破棄した」

沙織さんは……本当に廉くんのことが好きなんだと思った。

けどもう、会うことはないんだろうな。


食事を終えて、廉くんとソファでくつろぐ。

「澪桜、ちょっと目瞑ってて」

「え、目?」

こくんっと頷いた廉くん。

なんだろ……。

「わかった……」

ギュッと目を瞑ると、廉くんが離れた気がした。