バッて振り向くと、さっきまであったはずの足音は嘘みたいに誰もいなかった。

っ……やだ、怖い。

急いで家路について、やっとマンションが見えてきた。

はやく、はやく帰りたいっ……。

「みーおさん」

「っ……沙織、さん」

マンションの出入口にいた沙織さん。

なんでここに……。

「れ……八城くんなら、もうここには……」

「知ってるよぉ?だって廉、私と婚約してるもん」

……え?

クスクスっと可笑しそうに笑った沙織さん。

婚約……?

廉くんと沙織さんが?

「廉、お仕事で忙しいからって澪桜さんとの時間減らしてたでしょ?あれ嘘よ?」