まだ……廉くんの匂いが、体温が残ってる。

「ずるいよ……っ」

こんなんじゃ、ますます好きになっちゃうよ……。

ダメなのに。

「……帰ろう」

玄関を出てゆっくりとマンションに向かう。

この道……廉くんと通ってたな。

毎日が楽しくて、幸せで。

それももう……終わったんだよね。

──ガサッ。

「っ……」

後ろを振り向けば、誰もいなかった。

この前も聞こえたけど……気のせいかな?

歩き始めれば、徐々に聞こえてくる足音。

道を何度曲がってみても、足音は鳴り止まなくて一定の距離を保ってる。

嘘……まさか、ストーカー?