温めていたアイロンを持った廉くん。

……沙織さんの髪の毛やって覚えたのかな?

「えっと、もう特にないかな」

「……澪桜はほんと顔に出るね」

「へっ……」

鏡越しに目が合って、ギクッとした。

廉くんはクスクス笑うと

「母さんに覚えさせられたんだよ」

「絢さん……?」

「あぁ。花婿修行ってことで、女の支度手伝えない男は失格ってな」

なんか絢さんらしい……。

「その……ご、ごめんなさい」

「なんで謝んの?なんも気にしてないし、澪桜からの嫉妬は嬉しいよ俺」

廉くんの器が大きすぎるんだよ。

そう言おうとしたけど、やめといた。

廉くんが……愛しそうにあたしの髪を触るから。