ギュッと服を掴んだ。

「はぁ?」

「たしかにあたしは沙織さんに比べたら財力すらないしご令嬢でもないです。廉くんと過ごした日々はまだ浅いし沙織さんどころか他のご令嬢よりも劣ってる」

「そうでしょ?なら廉を私に返して」

「でもっ」

だけど、それでも廉くんが好きだから。

初めて、あたしを選んでくれた人だから。

「廉くんが好きだから、離れるつもりは一切ありません」

「っ何様なの!?鮎川財閥の令嬢の私に逆らえると思ってるの?」

「そもそも廉くんは物じゃないしあなたの元婚約者だっただけじゃないですか。今の廉くんの婚約者はあたしです」

「っこの……!」

コップを持って腕を上げた沙織さん。

っやば……!

「沙織やめなさい!」

──バシャンっ!