【廉side】

「くっそ……澪桜の前で」

ゴシゴシ唇を擦る。

澪桜が2階に行ってからもう30分は経ってる。

あんな傷ついた顔を見るのは初めてで。

「おい廉、そんなに擦ったら肌荒れるって……」

「るせぇな黙ってろ」

チッ……なんで今になって俺の目の前に現れる?

あの時……あいつが留学する時すべて終わったのに。

──ガチャッ。

顔を上げれば、伊代が2階の部屋から出て降りてきた。

「伊代!澪桜は……?」

「相当落ち込んでる……いや、落ち込んでるどころじゃないわ」

「っ……」

早く、澪桜と話さないと……っ。