【澪桜side】

午前0時。

大きめの黒パーカーに黒いキャップを被ってさらにフードをかけて家を出た。

向かうのは治安の悪い路地裏。

表のあたしは大橋宮財閥の操り人形。

だけど裏のあたしは、負けたことがない不良女。

巷では“夜姫”なんて名付けられてる。

足を進めれば、暗闇からたくさんの男たちがやってきた。

「おー?お前夜姫じゃねぇか」

「女ひとり、こんなとこに何の用だ?」

こんなとこになんの意味もなく来るほど、あたしはバカじゃない。

「ねぇ、あんたら強い?」

「あぁ?」

「強いに決まってんだろ〜?男なんだから、よ!」

殴りかかってきた拳をすかさず避けて、代わりに鳩尾に蹴りを入れた。