王冠はテオドールさまから弟王アクセルさまに引き継がれました。
ご兄弟はまだお若く、
日々のご公務に熱心にお勤めになられまして
その期間は30年以上続いたそうでございます。
このまま長く平和な世の中が続いていくように思われました。
けれど人々を不安にさせる出来事が起こったのでございました。
アクセルさまがご高齢になられましたころ
次期の王位継承はご長男リュカさまとお決めになったことでした。
それはお妃さまを不快にさせるご発言だったそうでございます。
それでも表向きには静かで何事も起こらないように思われていたそうでございます。
けれど王宮内では小さな反論があったと言われていました。
その後早急に会議が開かれて
リュカさまが皇位継承者に決定されたそうでございます。
アクセルさまがお亡くなりになり
喪が明けた翌年の春に
無事にリュカさまの即位式も執り行われたそうでございます。
ただリュカさまの異母弟のヴィクターさまは
王宮に出向かれてはいましたが、
大事な会議などでも別の用事にいらっしゃっていて
家臣が探し回ることがたびたびあったそうでございます。
母后さまがお亡くなりになられた後は
ヴィクターさまの行動が目に余るほど暴力的になったことは
確かなことでございました。
よくお取り巻きをお供に
以前はリュカさまが治めていらっしゃいました領地へお出かけになり
そこの人々に対して不利益に取り扱うような行為があったそうでございます。
またヴィクターさまを支持する者には有利な働きかけをなさったり
次第に国が二分していくような事態になったのでございます。
その日は・・・。
マリィはそう言いかけると、両手で顔を隠した。
そして肩を震わせて声に出さないように泣き始めた。
突然の出来事にみんなが驚いた。
「マリィ、ごめんなさい
嫌なこと思い出させてしまってごめんなさい」
マリィにいちばん近いところにいたクロエがマリィの肩に手を置いてなぐなめた。
みんなが口々にマリィに謝り始めた。
今までマリィのこのような姿を見たことがなく、
どのように言葉にして伝えていいものか、
お互いの顔を見合っているばかりだった。
フェリシティの隣で一緒に聞いていたエミリーは、
立ち上がると祖母に駆け寄って肩を抱きしめていた。
「おばあちゃん」
マリィは少しずつ落ち着いてきた様子で、みんなをほっとさせた。
「みなさん、ごめんなさい
話していたらとても懐かしくなってきて」
「あの、もしかして、マリィはどちらかの王女さまと関係ある人だと
わたしは思っていたの、そうじゃないかしら」
フェリシティはずっと心の中で疑問に思っていたことだった。
「はい、その通りでごさいます
わたしは妹カプシーヌの娘でございます」
