最後の航海


ダイニング中央の円卓にはトゥールーズ伯父とふたりの従兄妹。

陽葵はプライベート・キャビンでマリィの付き添いが必要なため欠席だった。

船長をはじめ乗務員たちが順序よく入れ替わりながら
ふたりの元へやってきては、結婚のお祝いの言葉をかけてくれた。

そしてまた自分の持ち場へと戻って行った。

フェリシティは自分が生まれてからずっと一緒に生活している
家族と同じくらい大切な乗務員スタッフや
自分たちの生活を支えてくれている使用人たちが集まってくれて
うれしさで胸がいっぱいになった。

乾杯の音頭はトゥールーズ伯父だ。

「新しい家族が増えたこと、また今日の良き日に乾杯!」

もしトゥールーズ伯父が別れの言葉を言ってしまったら、
この場にはいられなかっただろうと誰もが思った。

「フェリシティ、ママたちは変わりはなかったかい?」

トゥールーズがフェリシティの両親の様子についてたずねた。

彼女の両親は廃船が決定すると、他のみんなと同じようにひどく悲しんだ。

けれど父親も早くに亡くなり、
母親も自分ひとりではもう判断できないくらい弱っていることで
船を降りる決心がつくまでそんなに時間はかからなかった。

これからの生活の場所を探すために半年くらい前に下船し、
すでに新しい生活を始めていた。

そしてまだ船上に残っている人たちが早く地上での生活ができるように
サポートする準備を整えていた。

もちろんフェリシティも両親の住まいに近いところに帰ることになっていた。

「はい、毎日驚くことばかりだって言ってましたわ
 お買い物もそうだし、お友達と出かけるのも楽しいそうよ」

「ユイも初めて下界へ降りたわけだから、きっとそうだろうね」

トゥールーズは妹のはしゃぐ姿を想像してくすくす笑った。

「それでおじさま、
 結婚式の前にママの家に泊まっていたとき、レオニーさんっておばあちゃまに
 お会いしたんです、
 ママから親戚の人だって紹介されました」

「レオニーさんに? やあ僕もぜひ早く会いたいな」

トゥールーズはまるで子供のように身を乗り出してそう言った。

「ディアレオニー号ってこの船の名前はそのおばあちゃまと関係あるのかしら?」

「ユイはまだ君には伝えてないのかな?」

トゥールーズは顎鬚を触りながら悪戯っぽく笑った。

「ずっとわたしたち一族はこの船だけで生活してきて
 地上に親戚がいるなんて思ってもなかったわ」

「それじゃ我が一族の歴史についてマリィに聞くといいよ」

「マリィに?」

「マリィほどわたしたちのことを知っている人はいないからね」

フェリシティはアイザックを見て肩をすくめた。