これでお話しは終わりでございます。
いかがでしたでしょうか、
マキシムさまと奥さまが
どのように出会ってこられたか
わかっていただけたのではないでしょうか。
奥さまはマキシムさまがお亡くなりになって初めて
叔父さまに会いたいとおっしゃられるようになりました。
トゥールーズさまにお願いしてわかりましたときには、
叔父さま理佐子さま共に
もう亡くなられたあとでございました。
お調べしましたら、娘さんが3人いらっしゃることがわかりまして、
長女の方は陽葵さまとおっしゃるそうでございます。
レストランは叔父さまが亡くなられたあとは、
どなたも継がれなかったそうでございます。
奥さまは叔父さまのお墓参りにどうしても行っておきたいと
以前から希望されていらっしゃったので、
最後の航海で叶えて差し上げることができて良かったと思っております。
フェリシティは居ても立ってもいられない様子で
涙声で問いかけた。
「マリィ、わたしも一緒に行ってもいいかしら?
いいでしょアイザック」
「もちろんだよ」
「みんなで行こうよ、お祖母さまの故郷へ」
「左様でございますか、
奥さまもきっとお喜びになられるでしょう」
遠くの方で汽笛が鳴った。
「出航の時間だわ」
「デッキに行きましょうよ」
夜の潮風はたっぷりと湿気を含んでいたせいで、
フェリシティのワンピースの裾が足にまとわりついた。
タグボートが苦しそうにエンジン音を轟かせて、
ゆっくりとディアレオニー号を誘導していった。
また汽笛が鳴った。
みんながいっせいに耳を塞いだ。
見送ってくれる人影はなく、
デッキから見えるすべてが眠りについているように静止して見えた。
真っ暗な外洋に向けて力強く最後の汽笛が響いた。
星々の静かな瞬きは音のない夜の都会、
静かに明日の空模様を囁いていた。
航跡波が海の道をだんだんと小さくさせて、やがて消えていった。
