最後の航海


「こんにちは、
 あの、今日は店休日なんです」

陽葵さまは少し事務的にお声を掛けたかもしれないと
おっしゃっていました。

「や、やあ、残念だよ」

陽葵さまはマキシムさまの日に焼けた様子は
海に関係しているお仕事をされているのに違いないと思われたそうでございます。

やはり港が近かったからだと思われますが、
陽葵さまがご存じのその辺りを行き交うこういった
海のお仕事をされている人々には
共通していることがあったそうでございます。

けれどマキシムさまにはその共通点がなかったそうで、
不思議に感じられていたそうでございました。

「あの、今日は予約だけならさせていただけます、
 わたしはここのレストランで客席案内係をしているんです」

「陽葵、どうした?」

そこへ陽葵さまの叔父さまの亮一さまがやってこられたそうでございます。

陽葵さまのおかあさまの弟さんに当たる方でございます。

陽葵さまは、ずっとおかあさまとふたり暮らしだったそうですが、
おかあさまが病気で亡くなられてからは、
叔父さまが経営されているレストランをお手伝いされていたそうでございます。

また叔父さまが近いうちにご結婚が決まっていたそうでございましたし、
レストランもお店と住居を合わせたものに改装する予定になっていたそうでございます。

そのため陽葵さまはアパートへのお引越しを準備されていたところだったそうで、
ちょうどそのときにマキシムさまをお見掛けされたのでございました。

ここでマキシムさまはある勘違いをされていたのでございました。

陽葵さまの叔父さまのことだったのですが、
陽葵さまの恋人かご主人だと思われていたそうで、
叔父さまのフィアンセにお会いするまでずっとそのように思われていたそうでございます。

マキシムさまは叔父さまがこられたことで、
率直にお話ししたほうがいいのではとお考えになったそうでございます。

「急なお話しなのですが、聞いていただけませんか、
 僕はルフィーヴァランドで・・・」

マキシムさまが言いかけた途中で、叔父さまがそれをすぐに制止されたそうでございます。

叔父さまは裏口の鍵を開けるからとおっしゃいまして、
マキシムさまをレストランの建物の中へ呼んでくださったそうでございます。