わたしたちがテンダーボートに乗って沖に向かい始めたときに、
砂浜を振り返ってみると、
小さく両親の姿を見ることができました。
荷作りなどできなかったことがわかりました。
けれどずっと胸につかえていたものがすっとなくなっていきました。
従姉たちの両親もその後ろを走ってきている途中で、
うつ向いたまま座っている同い年の従妹の腕を揺さぶっておしえました。
両親の無事がわかりましたので安心できたからでしょうか、
ふと、ボートに乗っている方の中に、
従姉と同じ学校だとおっしゃった女性がおかあさまと一緒でした。
あとでわかったことでございますが、
その方がマキシムさまの妹のレオニーさまとおかあさまでした。
おかあさまはひどく体調がお悪いとのことで、
マキシムさまが特に気を使っていらっしゃいました。
波が静かだとはいっても沖に出るとそうではございません。
足元の悪いいかだのような上に降りなければなりませんでしたし、
マキシムさまは必死でおふたりのことをお守りしていらっしゃいました。
乗船の後は、少しおかあさまの様子を見られると
マキシムさまは砂浜で待っているわたしたちの両親や他の人々のために
また引き返していかれるのでございました。
しばらくしていると両親と会うこともできました。
両親は小さな声でわたしに言いました。
どのようなことが起きたのかは具体的にはわからないけれど、
平和だった国は急になくなってしまったようだ。
もう家に戻ることはできないんだよと。
この夜からわたしたちは船上で暮らすことなったのでございます。
