黒岩先輩って、こんな顔もするんだ。


今まで見たことがない先輩の表情に、なぜか心臓がドキドキと音を立てる。



「ほら、文化祭までもう時間がないんだ。今日のミスは本番のときに取り返せよ」


「はいっ!」




柳井先輩の言う通り、黒岩先輩はあたしのことをちゃんと見てくれていた。


あたし、今まで黒岩先輩のことを勘違いしていたのかもしれない。





それから文化祭の日まで、あたしはいつも通り変わらず黒岩先輩に怒られていた。


けれど、それが黒岩先輩の愛情だと知ったから、黒岩先輩のことを怖いとは思わなくなった。